借金のしこりをほぐす方法

動物としての人間の体は、本来、柔らかいものである。そして緊張したり、疲労したりすると固くなる。運動からくる肉体的な疲労はもちろん体を固くさせるが、これは休養をとれば回復する。やっかいなのは精神的な疲労だ。
 

精神的なストレスは体の中に複雑なしこりやゆがみを作る。そしてストレスによる過度の緊張を毎日々々積み上げていくと、体のこわばりは慢性化してしまう。
精神的なストレスが体にどのように現われるかというと、例えば、頭をストンと前に落としてみてください。

そして肩の上部の首の付け根に手をあててください。すると大きな骨がひとつボコッと出でいるのがわかる。この骨が頸椎7番―首の骨を上から数えて7番目にあたる骨だ。この骨のまわりの筋肉が固ければ、「借金のしこり」。お金の問題で悩むとこの部分がまず固くなる。「借金で首が回らない」のは実際に、首の付け根が硬直するからだ。
 

インドネシアに行ったときのことである。かねてから知人がお店を開いたと聞いたので立ち寄ってみた。こぢんまりとしたかわいい土産物店であったが、あまり繁盛している様子はない。ご主人が一人で店番をしていたので「奥さんはどうしたのか」と尋ねると、「風邪で寝ている」とのこと。「でも起きられないことはなさそうだ」と店の奥に呼びに行ってくれた。
 

奥さんは頭にスカーフをはちまきのように巻いて出てきた。頭痛が激しいのだという。額に手を当ててみると、熱はない。そこで背中を調べてみると、なんと首の付け根がコチコチでこぶし大の石が入ったかのように盛り上がっている。「これは借金のしこりですよ」と片言のインドネシア語で説明をすると、ご主人も奥さんも大笑いになった。開店したものの品物があまり売れなくて、借金の返済に困っていたのだ。
 

さっそく椅子に浅く掛けてもらって背骨をユラユラと揺する方法を教えた。ボディートークでは「背骨の波送り」と言っている。背中をゆるめて腰からユラユラと上方へ波を送っていく。すると波の動きに乗って頭がグラグラと揺れる。その時「アー」と軽く発声するのがコツだ。
 

この奥さんの場合は、首の付け根の借金のしこりの部分で波が通りにくくなっていたから、その箇所に快痛を感じる強さで揺すってもらった。それを5分ほど続けると頭痛がすーっと引いてしまった。
 

このように精神的なストレスが体にしこりを作っている時は、そのしこりが何によって生じたのかということに意識の焦点を合わせてほぐすとうまくいく。皆さんも会社での会議中や上司からの仕事の説明を受けているときに、背中の1点がピリピリ痛むという経験を持っていないだろうか。

責任を強く感じると「肩の荷が重く」なって筋緊張がおこり、痛みを感じるのだ。そんな時は肩の荷が重いぞと思いながら「背骨の波送り」をすると、しこりはとれる。
 

このように肩こりの症状は「借金のしこり」や「肩の荷」など、ほとんど精神的なストレスが原因となって起こる。それを同じ仕事をやり続けたから肩がこったのだと思っている人がいるが、その仕事をどんな心でやり続けたかが問題なのである。
 

例えば、歩き続けるとしよう。恋人と話しに夢中になって1時間、2時間あるいてもさして疲れるものではない。ところが、イヤな人と5分並んであるいただけで、もうドッと疲れがでてしまう。お店の対応も次々お客様が見えると快い疲れですぐに回復するが、1日にパラパラだと気が滅入って背中がドンと重くなってしまう。だから体をやわらかくするには心の問題に気づかなければならないのだ。
 

精神的なストレスは見事に背中にしこりとなって現われる。次回は背中に現われる心のしこりについてお話を進めよう。