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声のかけ橋ってなぁに?

●《虹のかけ橋》って知っていますか?

大空いっぱいにかかる七色の虹を見た時、「わぁ、すごい!」「きれい!」と思わず叫びたくなりますね。すぐに消えてしまいますが、消えた後も「あ~、幸せ」というような気持ちに満たされていた、という体験をお持ちの方も多いと思います。そんな思いを増田先生はバイオリンの基礎レッスンの中に取り入れて下さいました。《虹のかけ橋》という方法です。

それを簡単にご説明いたしましょう。《虹の架け橋》
太さの異なった四つの弦を、順に太い方から細い方 へ、また細い方から太い方へと上下に弓を動かし続けます。すると四つの弦が互いに共鳴し続け、その音が重なりあって、まるで虹のような美しい共鳴音を奏でていくという方法です。

この練習を数人で一緒に行なうと、さらにその音が響き合い、その響きに全身がたっぷり包まれ、ふんわりと暖かくなっていくのです。それにこの練習をすると、初心者なのに何だかとてもバイオ リンが上手になって名演奏家になったような気分になれるのです。

《声のかけ橋》をやってみると… これにヒントを得て《声のかけ橋》というパフォーマンスを考えてみました、ご 紹介いたしましょう。

●《声のかけ橋》のレッスン

① 2人向かい合って座ります。まず、2人同時に相手に向かって「おはよう
ございます」と、声をかけ合います。(この時は普段あなたがやっている方法
で、声をかけてみて下さい)

② 今度は自分の両手のひらをこすって暖め、そこに「ハァ~」と暖かい息をかけてみます。

③その声で、2人同時にまた向かい合って、「おはようございます」と言 ってみます。その時自分の暖かい声を、互いに相手の口の中にフワァ~ンと まるで「美味しい食べ物をどうぞ!」というイメージで運びいれます。お母さんが赤ちゃんに、スプーンでそっと食べ物を口に入れてあげている感じです。

(※相手に声をプレゼントする前に、一度自分でもその声を食べ、美味しいかどうか味わってみることが大切なポイントです)

④3までの練習がスムーズにいくようになりましたら、今度はお互いに「ちょ うちょ~」の歌を歌いながら、やはり美味しい食べ物を次から次へ、相手の口の中にプレゼントするつもりで歌い続けます。(好きな歌であれば何でもOKです)

⑤このようなイメージでしばらく歌っていると、お互いの声がやわらかく溶け 合い、いつも間にか二人の口と口をつなぐ「声のかけ橋」が出来上がっていくのです。心と体がふんわり暖かくなって、目には見えないのですが声と声がひとつにつながっているという不思議な感覚です。

●赤ちゃんとお話しをする時には…..

ボディートークマタニティや子育ての教室で、私は妊婦さんや赤ちゃんとお話する時には、この「虹のかけ橋」でお話するよう心掛けています。赤ちゃんの小さな口の中に、自分の言葉をそっとやわらかく入れていく。また赤ちゃんの発している音を「この口の中にどうぞ!」とやさしく誘うように自分の口の中に入れ、 それをまた赤ちゃんの口の中に返していくのです。

こうしてお話していると、とても楽しくなっていつまでもお話したり、歌い続けたくなってしまいます。そして気づくと《《声のかけ橋》が《夢のかけ橋》になっていくのです。

●美味しい言葉の交換は赤ちゃんの栄養

ところで「赤ちゃんが育っていくのには、何が必要でしょうか」と問われたら、 誰もが「おっぱい」と答えますね。それから暖かいスキンシップも、もちろん大切なものです。そして《美味しい言葉の交換》は心や体、そして脳の発育の為には欠かすことの出来ないものなのです。

ここでちょっと《交換》というところに注目してみましょう。赤ちゃんは食べ物を自分ひとりで探して食べることが出来ないのですから、与えられるばかりになります。『声』は自分の意思を伝えるものとして、生まれた時から相手に投げ掛けているのです。ですから赤ちゃんは、《言葉》を一方的にあげるばかりでなく、赤ちゃんからのメッセージを喜んでもらってあげる、という姿勢がお母さんや周囲の人達にあると、赤ちゃんは次から次へと自分から相手にメ ッセージを送り続けていくことが喜びになっていくのです。

そしてその喜びが赤ち ゃんの心の栄養にとなっていくのです。このことは赤ちゃんだけでなく、もちろん私達が幸せに生きていくには、一生必要なものなのです。《《声のかけ橋》は、 バイオリンが私にくれた素晴らしいプレゼントでした。

増田先生は、「声は心と体を結ぶかけ橋ですよ」と、ボディートークで教えて下さいましたが、バイオリンの四つの弦が互いに美しく響き合う《虹のかけ橋》のように、人と人のやわらかい声が響き合い、暖かい心がつながっていく、そんな「声のかけ橋」を一度、あなたもかけてみられてはいかがでしょう?きっと、また新しい発見があるかも知れませんよ。