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困ったときには三人輪くぐり

● 泣いて 心・体・頭をリラックスさせる技

「できない!できない!」 「だって、私にはとうてい無理なんだもの!できるはずない!」 自分では解決できないほどの問題を目の前にした時、ついこう叫びたくなりますね。こういう時は思い切ってあきらめてしまうか、ちょっとその問題から 離れてみるといいのでしょうが、それでも逃げられない状況に立たされた時、 あなたはどうしますか。むしょうに腹が立ってやたらに食べ始める人もいます し、泣き出す人もいるでしょう。

私はかつて大学入学の頃、身長160cm、72kgの体重で、ニックネームも 「ブーちゃん」と叫ばれていました。その体重で強制的に入部させられた新体操チームのメンバーは皆、国体出場経験のあるバリバリのスポーツ・ウーマン。 その中で、難度の高いテクニックを一緒にこなしていくのは至難の技でした。

何百回、何千回練習してどんなに頑張ってみても、どうしてもできない技になると、自然に涙が目から溢れてきて、何故か大泣きしていました。すると不思議なことに、泣いた後には必ずその技ができるようになるのです。こうやって、 泣いて心・体・頭をリラックスさせる技上達し、一年後には体重も50kgラ インに減量。チームは全九州で優勝を飾ることができました。

● 三人輪くぐりの知恵」

そんな私も42才でボディートークに出合ってからは、ボディートークのパ フォーマンスの中に見つけた知恵に助けられ、生き方もずいぶん変わっていきました。今回は、困った時にきっとお役に立てていただけるおすすめのパフォ ーマンス『三人輪くぐり』をご紹介いたしましょう。

《三人輪くぐり》
1 三人互いに両手をつなぎ輪をつくります。  2 そのつないだ手の間を「ホッホッホッホッ」と発声しながら、ペンギン歩きでくぐり抜けていきます。くぐったり、出たりを繰り返すことによって、各々の肘・肩・体が必然的に色々と変化しながら動きます。  3 上達すると、「シュ〜」とか「スルスルスル」とか風が穏やかに吹き抜けていくようなイメージで、なめらかにスピードをあげて動いてみます。  4 もっと上達すると今度は 2、3の動きを目を閉じたままでやってみます。 最初はお互いの手を引っ張りすぎあったり、ぶつかったり、ギクシャクして 上手にできないのですが、工夫してやり続けていくうちに“アレッ!スムーズ に動ける様になった”と感じれたら、成功です。

三人各々が、自分の心・ 体・頭をひとつとして、しなやかに素直に、その流れに身を任せるようになる と、オノズと生き方、考え方、行動の仕方も、その場の変化にホイッとついて いったり、積極的にリードできるようにもなっていくのです。

このバフォーマンスの大きなヒントは、手をつなぐという条件を制約されているので不自由〉と捉えるか、〈制限があるからこそ、その中に《生み出さ れるものがあるから素敵〉と考えるかです。私はこのパフォーマンスが大好きです。特に目を閉じると(視覚をクローズする)、残された感覚が敏感にな り、体の声が聴きやすくなってきて、全身がさらに自由になり、まるで無重力の中で漂っているような楽しさです。

● 大切なものが見えてくる

今、私は二本足でスムーズには歩くことができ ません。三本足(一本は松葉杖に支えられ)でゆ っくり一歩ずつ歩くのが精一杯です。でもその中で赤ちゃんがハイハイから立ち上がり、歩く営み の凄さを改めて感じたり、事故や高齢になり今までやれていたことがやれなくなっていく人たちの 気持ちにも、寄り添える自分になっているような気がします。

「三人輪くぐりの時、ぶつかったり体がもつれるような時は、そこでちょっ と立ち止まったり、ちょっと力を抜いてみてくださいね」と、アドバイスをす ると、スムーズに動ける様になることもあります。

新幹線に乗ると、早くて便利ですが、外の光景はあっという間に流れ去ってしまいます。でも、一歩ずつゆっくり歩いてみると、普段見えなかったものも、 これまで見落としていたものも自分の心さえも見えてくるものです。ひょっと したら、赤ちゃんやお年寄りの方が、自分にとって大切なものが輝いて見えて いるかも知れません。