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赤ちゃんのサインを内感能力でキャッチしましょう

7ヶ月になる女の子を抱いて、若いお母さんがやって来ました。赤ちゃんの名前はI ちゃんと言います。賢そうなキリッとした顔立ちの赤ちゃんです。 少し一緒に遊びましたが、こちらのやることをジッと見つめて、目を離しません。

このような赤ちゃんは、好奇心いっぱ いで次から次へと真似したり、考えたりしていますから、物の名前や行うことの意味を、その都度声を出して伝えることが大切です。例えば「これはスプーンよ」とか、くまのぬいぐるみを持ってたら手を小さく振りながら「くまさんがバイバイしているよ」
など、いっぱい語りかけてほしいのです。

どのお母さんも赤ちゃんの指を持って、目や口へ近づけて「おめめ、おくち」と何度も教えますね。赤ちゃんに物には名前があることや、客観的に物を認識することを伝えているのです。

こういうことは、マメに行えば行うほど、 赤ちゃんの頭の発達には大きな成果があります。ヘレン・ケラーは女教師から ポンプから溢れ出す水を手に触れさせられることによって、「水」を客観的認識し、そのものに「water」という名前があることを知りました。 感動的な場面です。

赤ちゃんとお母さんは、そういう場面を、毎日毎日積み上げ ているのです。五感をフル回転して、学習して初めて身についていくわけです。

Iちゃんは、さかんに舌打ちをして、音を楽しみ始めました。私は同じように舌を動かして真似をしました。Iちゃんは私の口を熱心に見つめながら、 次々と音を変えていきました。赤ちゃんが自然に出す声や舌打ちなどを、周りの大人が同じことをすると、赤ちゃんは客観的に発音を意識するようになりま す。このような積み上げによって、赤ちゃんは言葉を獲得するのです。

「離乳食を始めたいのですが、いつ頃からがいいでしょうか」とIちゃんの お母さんが質問しました。厚生省では生後5~6ヶ月になれば、と指示しているそうです。これも一つの目安ですが、外の条件だけで判断すると、その絶妙なタイミングをのがすことになります。

ボディートーク会員の助産師さんによ ると、ヨダレが滝のように流れ出るようになったり、食事の時に大人のお箸の動きを恨めしそうに見たりするようになれば、離乳食を始めればいい、ということでした。

I ちゃんは、同じ時期の赤ちゃんと比べるとハイハイのスピードも早く、つ かまり立ちへの動きもしっかりし、あっという間に立ちます。小さな歯が、歯ぐきからチラッと顔を見せています。こうなると本能的に物をしっかりと噛み たくなっているのです。いっぱい噛むことによって、歯も歯ぐきも丈夫になる のです。離乳食を始める時期にもう来ているようです。

「快食・快眠・快便」は。赤ちゃんに限らず全ての人の健康のバロメーター ですが、赤ちゃんの排尿、排便について、最近、少々気になることがあります。 私が子どもの頃は、和式トイレしかありませんでしたから、幼児にオシッコ やウンコをさせる時には、大人が膝の間に抱いて、しゃがみ込んで声を掛け、 尿意や便意を促しましたが…、最近の赤ちゃんは小さなオマルに座らせられて、 出るまで待つという方法を強いられているようです。

子ども達が大好きな童話「モチモチの木」の中でも、夜中に一人ではオシッコに行けない五歳になる豆太を、おじいさんが抱きかかえてオシッコをさせる場面がありますおじいさんが「ああ、いい夜だ。星に手が届くようだ。奥山じゃア、シカやクマめらが、鼻ちょうちんだして、寝っこけ てやがるべ、それ、シィーッ」と豆太に声をかけて、オシッコをさせます。ほ のぼのとした、暖かい心の交流が感じられます。

私の子どもの頃も、母親が 「シーッ、コイコイ」と言いながら、させてくれました。その時は母親も下腹部を収縮させていて、それが子どもの体に伝わるのです。 大好きな母親の体と声のぬくもりが直接伝わり、気持ちよく排尿できた喜びが、 親子の絆を強くしていきます。

育児の中での赤ちゃんの様々なサインを、母親や周囲がどう受け止めていけばいいのでしょう。それには、赤ちゃんと同じ動き、同じ姿勢、同じ表情を、 同じ声(息)で真似してみて下さい。きっと赤ちゃんの内側が少しず つ感じられるようになっていくと思いますよ。