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心身一如の 体ほぐし

「ふれあい」という言葉はいつ頃、誰が言いだしたのでしょう。 人と人とのお付き合いが、お互いの体に触れ合うことから始まるのだと指摘して、言い得て妙、の表現です。現代の私たちは体を触れ合わないで話をするだけでも「ふれあい」と言っていますが、 この言葉を生み出した当時は、何らかの身体的接触をもって初めて心と心が通じ合うと考えていたのではないでしょうか。

生物学的に人間は接触動物ですから体に触れることの重要性は 精神面にも大いに関係しています。例えば抱かれることの少ない赤ちゃんが、情緒不安定になりがちであることはよく知られています。また心におびえがあったり、不安感の強い子供はしっ かりと抱きしめる必要があります。

しかし抱く側にとっても身体接触は大きな意味があるのです。母親は赤ちゃんを抱きしめ ることで深い満足感と幸福感に浸ることができます。若いお父さんにとっては赤ちゃんをお風呂に入れる時が肌と肌を直接触 れ合うことのできる絶好のチャンスでしょうね。

赤ちゃんを抱 くことで我が子の実感を得、子供との身体レベルでの絆が結ばれるのです。また老人が赤ちゃんを抱きたがるのもわけがあります。老人にとって赤ちゃんの柔らかく弾む生命を、肌でじかに感じることが、自らの体を蘇らせ心を癒すことになるからです。

会社の人間関係でも、身体接触は大事だということで、かつて「ニコポン運動」とかが提唱されたことがあります。上司は部下に対して積極的に「ニコッ」と笑いかけて「ポン」と肩をたたこうという主旨です。今は「セクハラ」が大きく取り上げられる時代になりましたから、男性の上司が女性の部下の身体に手で触れるだけで問題になりかねません。だから「ニコポン」なんて影も形もあり ません。

しかし「ニコポン」も「セクハラ」も身体接触について大切な意味を教えてくれます。即ち、コ ミュニケーションを深めるには「触れる」ことは基本だけれど「意味のない独れ方」は良くないということです。触れるのだったら相手の心や体がほぐれる「意味のある身体接触」でないといけな いのです。

人間関係に不可欠の「意味のある身体接触」を私は「キー・タッチ(KeyTouch)」と呼んでい ます。相手の固くなった心や体を開く健(Key ) となるタッチの方法だからです。
キー・タッチは柔らかい触り方です。例えばバレーボールを軽く放り上げて受けとめてみてくだ さい。音がするようだと固いタッチです。ボールが落下してくるところへ手をのばし、自らの手もボールと共に手を下ろしながらてのひらにスッポリ納まるように受け止めると何の音もしません。

赤ちゃんを高く差し上げて、ちょっと放り上げてやると、とても喜びますが、この時の抱きとめ方と同じです。ソフトなタッチだと赤ちゃんは安心の中で快い緊張を味わうことができるのです。 これを固くぎこちなく行うと、赤ちゃんは恐怖の緊張を感じるので、無意識の中で神経の過緊張が 生じ、やがて高所恐怖症になったり、運動の苦手な子供になったりするのです。

赤ちゃんが安心して快いソフトなタッチ。犬や猫の背中を揺すってやった時、トロッとしていつまでも触らせるような柔らかさが大事です。
またキー・タッチは温かい手のひらで行います。上達するほどに手は温かくなるのです。

極端に冷え性だった一人の女性が、ボディートークを始めてシモヤ ケにもならず冷え性で悩むこともなくなったのですが、普段 はまだヒンヤリした手をしています。ところが彼女がキー・ タッチで「背中ほぐし」を始めると数分で手のひらがポカポ カしてきます。

気功師の手のひらの温度が上がる実験を、時々テレビで見かけますが、あれと同じです。手のひらからは、遠赤外線や生体は気が出ていると言われていますが、それらの力がキー・タッチを行うことで強く働き 始めるのです。だからキー・タッチは行う側の体を活性化するためにも学ぶ価値があるのです。

肩甲骨ゆすり
ウケチはうつ伏せに寝ます。その背中にシテはまたがります。この時、ウケテの背中に座り込まないように。 そのために、シテはどちらか一方の足を立て、片膝は床に着け、そして各々の肩甲骨に手を乗せ、水平に交互に揺すります。

揺れている間、ウケテは「アー」と軽く発声します。 もともと息を詰めている人は声が途切れ途切れになるでしょう。その声が「肩甲骨ゆすり」を続けるうちにつながり始めます。つながれば気管支がほぐれてきた証拠です。