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心の天気図で 危険を回避!?

●お元気ですか?

「お元気ですか?」と尋ねられると、たいていの人は「ハイ!元気です」と 答えてしまいます。英語でも「How are you?」と聞かれると、すぐに「Im fine!」と言ってしまいます。でも私はボディートークをするようになって答え方が変りました。体調の悪い時は「うーん、ちょっと今日は元気じゃないの」とか、「ちょっと辛いの」とか言えるようになったのです。
ボディートークが身につくと、「あー」と声を出してもらえば相手の体や心 の状態が分かるようになってきますが、ボディートークを知らない人には、こ れは無理なことです。

●今日の元気は?

おおまかには、自分の体調がとても快調・普通・不調ぐらいだったら、誰でも 分かるはずです。そこで私は幼稚園や子育てのセミナーなどで、先生方に次のような提案をよくします。、

朝の子どもの健康のチェック
「おはようございます! みんな元気? 『今から自分の心の天気を言ってね』と
一人ずつ名前を呼びながら尋ねてみてくださいねと。 でもまずは、今日の先生の天気を子ども達に伝えるのが先ですよ。」
「今日はちょっとイヤなことがあったから、心の天気は曇りで~す」とか。
しばらく続けていると、最初は戸惑っていた子どもも、「雨で~す」とか 「カミナリ注意で~す」とか、少しずつ言えるようになっていきます。

●天気予報は役に立つ

実はこの方法は、ボディートークを知ってから、私が短大の授業の時によく
使っていたやり方なのです。自分が不調だと、普段気にならない学生の行動が
やけに腹立たしく感じることがあったからです。ですからそんな時は前もって、
「今日の私の心は大嵐です。皆さんも怒られないよう注意していて下さいね」 と、予報を出すようにしていました。だって、普段と同じ行動をしているのに、 その日に限って、突然怒られたなんて学生が可哀想ですから・・・。

保育園や幼稚園でも、朝からお母さんの虫の居所が悪くて、叱られて悲しい 思いをしてきている子どもは、ちょっとした事に傷つきやすくなっています。
もしその子の心の状態が分かっていれば、心掛けてやさしくもしてあげられま す。お友達もその日は自分の大好きなおもちゃでも、優先的にゆずってあげようと優しい気持ちになれる子もいるはずです。

自分の体調や感情を、素直に、客観的に言葉にして相手に伝えれることは、 自分の身を自分で守っていく力や相手とのコミュニケーションを豊かにしていく力のベースを育てていくことに通じると思うのです。

お母さんの心の天気は? 子育てでも心の天気予報は役に立ちます。「お母さん、今日はちょっと朝から頭が痛いの。お母さんの心の天気はうす曇」と聞いておけば、子どもも 「あ。欲しいものをおねだりするのは別の日にしよう」とか、自分の感情のコ ントロールするのにも役立つはずですし、お母さんを思いやる心も生まれてくるはずです。

天気予報は災害などを防ぐためにも大切なもので、前もって分かっていれば、避難もできる訳ですからね。
ちなみに増田先生の心の天気は、一年中ほとんど変わることなく、毎朝、日本晴れ!! 明るい声で「おっはよう! Good morning!」。子どもの頃か らず~っと「いつもごきげんアキちゃん」だったそうです。元々、体が元気で あったこともあるでしょうが、晴れの方が気持ちいいから自分でも努力してあったのでしょうね。自然で清々しい声です。

●心の天気図って知ってる?

ところでお天気といえば、子ども達は今でも遠足の前の日になると、♪てるてる坊主てる坊主 、あ~した天気になぁ~れ♪ と歌いながら、窓際にてるてる坊主を下げています。残念ながら、天候を願い通りに変えることは誰もできませんが、心の天気を見事に変えていく方法はあるのです。ボディートーク のプログラム《心の天気図》を体験されると、「本当だ!!」って納得できますよ。




星の時間

●夏の夜空を見つめながら

ふと見上げた真夏の夜空。そこに輝く満天の星たち。両手を大きく広げて、 息を胸いっぱいに吸って・・・しばらくじっと見つめていました。懐かしい思い 出がいくつも蘇ってきます。

三才頃の思い出です。夕暮れの明かりの中で、丸い飯台を囲み汗をブルブ ルかきながら夕食を済ませ、おフロからあがると、大きな縁台に寝ゴザを敷い て浴衣で寝そべります。その頃にはもう空には星が瞬いています。蚊取り 線香と夏草のかすかな匂い。リーン、リーンと風鈴の音。添い寝をしてくれて いる祖母が、ウチワでゆったりと扇ぎ続けてくれる心地よい風に当たりながら 星空を眺めているうちに、いつの間にか夢の中。

ぐっすり眠ってから、抱っこして運んでくれたのでしょう。朝、目を覚ますとカヤの中のおフトンにいるのです。毎日こうして大事に育ててもらったのだなと、今は亡き祖父と祖母に感謝しています。
冷蔵庫のなかった頃ですから、食べ物一つ一つを慎重に嗅ぎ分けて口に入れないことには、子ども達はあっという間に赤痢や食中毒になってしまうという 時代でした。一人の赤ちゃんが元気に育ちあがるまでには、今と比べると比較にならないほどの《山ほどの手間ひま》が必要だったと思われます。

●今日も一日よく頑張ったね!

《忙しい》という文字は《心を亡くす》と書きますが「昔のようにのんびりとまではいかなくても、せめて一日の終わりに『今日も一日よく頑張ったね え~』と自分を褒めてあげて下さいね」と、ボディートーク・子育てマタニテ ィセミナーでお勧めしているのは、少しでも自分の心や体を見つめなおす時間を持って頂きたいからなのです。「だって、そんなに頑張っていないもの」という方には、「オシッコ出ているでしょ?食事もできているでしょ? 歩けているでしょ?あなたは、そんなこと当たり前で何も頑張っていないと思っていらっしゃるかも知れませんが、体は懸命に働いてくれていますよ。だから 褒めてあげて下さいね」と言うことにしています。自分の生命の営みに、一日 一回「ありがとう!」って感謝する時間にして欲しいと思うからです。これが Body-Talk time です。

●モモと時間どろぼう

さて、今年の福岡のミュージカルは、”モモと時間どろぼう”です。ミヒャ エル・エンデ『モモ』の原作を分かりやすく子供向けに、増田先生が脚色されたものです。生命を大切にする感性を磨くボディートークのミュージカル作 品として、是非、赤ちゃん役を登場させて欲しいという私の夢が今回叶いました。

ゆったりとした時間をたっぷり持っている女の子モモと、ベッポじいさん。 そして時間どろぼうから時間を盗まれ、心を失っていく町の人たちとのストーリーが展開されていくミュージカルです。ラストシーンは、モモとカメの力で町の人の心が戻り、喜びの中に赤ちゃんの産声が聞こえてきます。そして 町の人たちの暖かい歌声が、子守唄のようにやさしく夜空に響き渡るのです。
Schu
♪空いっぱいの星たち 光ときめき響きあい 生命ひとつ生まれるそれが星の時間さ
「わかったわ 生命のすべてが」 星から生まれて 心はひとつにつながる~♪
keshte
これとい
♪生命ひとつ 生まれる~♪

と歌っていると、何故か 私は、そこで一緒に歌っている仲間たちの一人一人の 生まれた時のことが、次から次へと想像されていくのです。
何もなかったところに一つの生命が奇跡のように誕生し、 やがていつの日か、その一つの生命は必ず消えていく生命の神秘。神秘だからこそ、一つ一つが星のように輝けるのかもしれませんね。私の星の時間、大切に生きていこうと思います。




ひとり ひとりの 手にふれ 息にふれ

●出逢った時は
ボディートークに出会ったのは30年ほど前。毎月、福岡から広島へ新幹線に乗って月例会へ出かけていました。その頃の私は、頚椎のヘルニアで視力もかなり低下し首の痛みがあり、授業で板書の為に手を動かすのがやっとという状態 でした。

日本ダンスセラピーの発会式で増田先生に会い、おむすび“パッ”の全身を通り抜けていく不思議な声に「これは何か違う!ここに何かがある」と直感し、広 島へ通い始めた私でした。

月一度の月例会の内容は、いつも目からウロコ、ウロコ…こんな考え方、 感じ方があったのかと毎回ショック続きでした。生卵が立つのも、四つん這い 姿勢で背中が波のようにしなやかに揺れるのも、鉛筆倒しで魔法がかかったように相手の手に背中が引き付けられていくのも、何もかもが今まで生きてきた世界とはかけ離れた、生命をとても大切にする繊細な感覚の世界でした。

●夢をもってリーダーを養成
出会いから、ひたすら魅力あるボディートークの世界で生きてきました。 福岡から熊本への航路が開かれ、その飛行機の中から天草を見下ろしながら、 この屋根の下に住むどの人も、温かいぬくもりの中に生まれ、包ま れて、一生を終える人生を送っていける日が来ると良いな、と夢一杯に2年間、リーダー養成に毎月通ったのも懐かしい思い出です。

また5月15日は私の誕生日ですが、沖縄本土返還の日も 1972 年5月 15 日。何かの縁を強く感じ、この沖縄で私は何をお返しすれば良いのだろう? 今の平和のために沢山の沖縄の方達が生命を捧げて下さった沖縄に。感謝とともに、この想いが沖縄の空を飛ぶ度に心に響いてきます。

●エンゼルハンズをベースに
《よりよく生きるための知恵≫としてのボディートークの内容は、広く、深く、どこまでいっても深い森のように果てしないものです。それでも初めてボディートークに出会う人に分かりやすく、しかも最も生命が繊細になっている時の生命の捉え方をベースに、伝えていきたいそれがエンゼルハンズのスタートです。生命の触れ方≪ふんわりと繊細に ≫は、とても深い内容です。感覚の世界は個人差も大きく、数値化できないだけに、伝え方も簡単ではありません。

●プロフェッショナルな人は、どこで学ぶの?
「医師・看護師・助産師・保健師など、人の体に直接触れる人達はどこで、そのタッチの仕方を学ぶのかしら?」尋ねてみても、時間をかけてその事を学習する場はなく、経験を積みながら各々が自分の感性で身につけていくのがどうも現状のようです。そこまでの繊細さは必要ではないのかな?と、 反対に私が迷うこともあるほどです。

●決してイヤだとは言わない、言えない
私がプライベート・レッスンなどで接していく自殺未遂の子、不登校の子、 ウツで長い間引きこもっている人などは、ほとんどの人が自分の感覚でイヤだと感じていても、外には決してイヤだとは言わない、また言えない人が多いの です。

イヤなことがあっても黙っています。だから外からは分かりにくいし、分かってあげられないのです。そういう人達と接する時には、まず空気のように、傍に漂うようにスタ ートすることにします。私の存在そのものが、その人にとって異和感であれば、 言葉かけも、体ほぐしのタッチも、その人の内に入ることは出来ず、共鳴してくれるはずはないのです。

私が何かしてあげようとか心に思っているだけでも、 相手の重荷になったり、相手の息が苦しくなっていることもあるからです。 「じゃあ、どうすれば良いの? 私にできるのは、「気体になること。そしてその人の傍にいる心地良さを共有する」ということだけです。(※赤ちゃんの、傍って嬉しいでしょ? そんな感じです)

(この続きは来月号に掲載します。便秘の赤ちゃんの体ほぐしなどについてのコメントをします)




夜の星を見上げてごらん

空を見上げると 

♪ 星空を見上げると

      何故かしらおだやかな 

         不思議な気持ちが満ちあふれる〜 ♪

これは明先生がミュージカル「モモと時間どろぼう」のテーマソングとして 作詞された《星の時間》です。この歌を唄うと、決して手の届かない遥かなたの星と自分とがひとつになれて、その光にやさしく包まれたような、ほーっと穏やかな気持ちになっていきます。

唄うだけでもそうなのですから、 本物の星座や真っ青な大空を見上げた時の心地よさは格別です。農耕民族だっ た日本人は、朝起きるとまず、空模様を見ることから一日が始まりました。 「おてんとう様のおかげ…」と、空を見上げる動きは当た り前に昔の生活にはあったのです。 

でも、今はどうでしょう? 空を見上げるどころか「おはよう」と言うより、パ ソコンを立ち上げることが先決になっていませんか?このように自然や人との 語らいよりパソコンなどと向き合っている 時間の方が圧倒的に多くなっている現 実があります。こんな生活が続くと、私た ちの体や心はいったいどうなっていくので しょう? 

● 心を見る目と、心を失った目 

ところで「目は口ほどにものを言う」と言われますが、内息傾向の強い日本 人は思いを胸に秘め、多くを語らないことが美徳とされた時代もありました。 でもその代わりに目によって自分の思いを伝え、また相手の気持ちを目から読 み取ることを得意としていたかもしれません。

赤ちゃんは言葉こそ話せません がジーッと相手の目の中を覗き込むように見つめながら懸命にその奥にある心を知ろうとします。 

しかし、次第に言葉や文字が使えるようになると、コミュニケーションの手 段をそれだけに頼ってしまって、息遣いや目、顔の表情から相手の心を読み取 ることが不得手になっていく傾向があります。つまり”心を見る目”の力が弱まっ ていくのです。

これでいいのかな?と思い出すのは、手塚治虫の 漫画「火の鳥」に出てくる、黒い瞳が入っていない目をした人間たちです」 最初それを見た時、私は背筋がゾーッと寒くなりました。人の心を無くした人 間を、彼は目で表現していたのです。それを見ながら、これは漫画の世界だけで なく、いつか気づかぬ間に私たちの周囲は白まなこの人間ば かりでいっぱいになるのでは…と思ったほどでした。 

そこで今日は、黒い瞳がキラキラと輝き、暖かい心を伝えあうことができる 目をゲットするための方法をご紹介したいと思います。 

● やわらかい目になりましょう 

実は心の悩みでボディートークのプライベート・レッスンを受けられる方の目に触れさせていただくと、エーッと驚くほど固く、まぶたを閉じて眼球 を上下に動かしてもらっても、上に動きづらい方がいらっしゃいます。目も心 も動かない状態です。そういう方には体ほぐしの後に、次の二つの方法をおす すめしています。そのひとつは ≪目をあたため、ゆっくり動かす≫ことです。 

まず両まぶたを閉じて、その上からそっと手で触れてみます。その目が半熟 卵のようにやわらかければ大丈夫。反対に固ゆで卵のようであれば要注意です。 固かった方は、 

1 あったかハンドをつくり、それをまぶたの上にあてあたためます。(熱い蒸しタオルでもOKです)

2 あたたかくやわらかくなったら、まぶたを閉じたままゆっくり牛やカラス の声を出しながら、ゆっくり眼球を上下左右に動かしたり回します。こう していると徐々に目が柔らかくなり、動きもスムーズになっていきます。 すると体からフーッと余計な力が抜けて、頑なになった心も緩んできます。 

● 自分の身を守る目の力もうひとつのお勧めは “夜空の星や月を見る”ことです。 

1 遠くのものを見る 

2 顔をあげて見上げる

この2つの動作によって息が深く、心が安らぐ効果があるからです。

 目が見えるということはありがたいことですが、近くのものばかりを見続けていると眼球を支える筋肉の収縮が固定化されて、固くなり疲労します。そして 遠くのものを見る機会が少なくなると、次第に遠くを見る目の力も、また見えているものが何であるかを、識別する能力も落ちていきます。 

野生の動物にとって見えたものがエサであれ、危険なものであれ、遠くにあ るものをいち早くキャッチして見分ける能力は、自分の身を守りたくましく生 きていくために欠かすことのできない力なのです。その大切な目は、夜に充分に 休ませているからその働きを保つことができるのです。

子どもの頃に野山や海 辺と視野が広がる場所で目を動かし思いっきり遊ぶことや、夜はなるべく光の 届かないところでよく目を休ませてあげることの大切さがここにあります。 

● 縦方向の目の動きは深い息をつくる 

《夜空を見上げると》の効果は、アクビを考えるとよく分かります。アクビ をする時、思い切って両手を上へ伸ばし、アゴも上にあげ、口を大きく開いて 「アー」と声を出すでしょう。そうやると横隔膜が広がり、息が体にたくさん 入っていることを体は本能的に知っています。

夜空の星を見つめるだけでもア クビ効果があります。それに月や星の光は太陽ほど眩しくありませんから、 長時間でもゆっくり見上げていることができるでしょ? だから♪おだやかな気持ちが満ちあふれる〜♪ほどの深い息になっていくのです。 

深い息は、縦方向の目や顔の動かし方やイメージの持ち方で作られていきます。 祈りの息は、どの宗教でも天を仰ぎ地に伏せ、神と自分をつなぐ上下動の縦の息です。お経、讃美歌、コーランなどを繰り返し深い息にしながら、響きを頭 から足下へ通し、体を整え心を整えようとした先人たちの知恵は素晴らしいで すね。

でも、パソコンやメールの文字は横書きで、ほとんどが左・右に目を動 かすので、横の息になり、下へ降りずに浅い息になります。舞踊の世界では、 目を左右に動かし“周りの人の心をさぐる”表現をします。

としたら、一日中 パソコンを相手に仕事をしている方に「是非、生活のどこかに縦方向の目の動きや息遣いを!」と思わずお勧めしたくなってきます。

「心を伝え合える目は、やわらかく、あたたかい目。やわらかい目とその目から注がれる「あたたかいまなざし」は、月や星の光のようにやさしく穏やかで す。赤ちゃんはそのあたたかいまなざしに包まれ、すくすくと成長していきま す。そしてそれは赤ちゃんだけでなく、あなたも私も誰もを幸せにする宝物です。 

今夜そっと夜空を見上げてみませんか? 春の星たちが、あなたとのお話しを待っていますよ。 




お気に入りのゆりかごでねむりましょう

⦁ 一 日頑張ったごほうびに
   ♪ ゆりかごの歌を   カナリヤが歌うよ
       ね~んねこ   ね~んねこ  ね~んねこよ~

スヤスヤと大好きなお母さんの胸に抱かれ眠る赤ちゃんの寝顔。 いつ見ても
いいものですね。 人生の三分の一、 もしくは四分のーは眠りの時間。≪寝てしまえばどこにいても同じ≫という考えもありますが、 この時間を一 日 一生懸命頑張った自分へのご褒美の時間としてプレゼントするという発想はいかがでしょう?

おフロにゆっくりと入った後は、 お母さんの胸の中のような、たっぷりと安らぎのある≪特性ゆりかご≫をあなたの為に準備してあげるのです。

● お気に入りのものに囲まれていますか?
ある月例会で明先生が、 「 皆さんはお気に入りのものに囲まれて眠っていら
っしゃいますか?」と尋ねられたことがありました。
あなたはいかがですか?
≪お気に入りのものばかりに囲まれている≫と誰だって嬉しいですね。 嬉しいと息はあたたかくなり、 満足感でフーッと深く降りた息になります。

すると頭も心も体もリラックスして心地良い眠りにつけます。 反対にイヤなことや緊張が続くと人の息は冷たく体は固くなっていきます。 そういう状態だと、 眠ってはいるものの充分に疲れが取れず、 頭も心も何だかスッキリしません。 もちろん毎晩、大好きな人に体ほぐしをしてもらえばいいのですが、 そうできないのが現実です。

ですからそんな時、 ちょっと気持ちを切り替えて、 積極的に自分の囲りをお気に入りの空間、 時間、 お気に入りのものばかりにしていくのです。 それが≪あなたの為の特性ゆりかご≫というわけです。

● 昔の人はマメだった
考えてみると昔は、扇風機も冷房も暖房も無かったので、≪心地よく暮らす 工夫≫をすることにマメだったかも知れません。夏になると、風は入るけれど 虫が入らぬようにカヤをつり、寝ゴザを敷いて涼をとっていました。寝ゴザの イ草の匂い、虫や風鈴の音・・・カヤに入ると何とも言えない自分が包まれた安心感があり、採ってきたホタルをカヤの中に放すと、ホタルの光が飛び交い、それを見ながらいつの間にか眠ってしまう。今思うと、何と風情のある贅沢な生き方だったなぁと懐かしくなります。

● お気に入りのゆりかごづくりは楽しいよ
もちろん私は、お気に入りのものばかりに囲まれて毎晩「あ~幸せ」と、ご機嫌 でフカフカのお布団にくるまっていますが、ただ残念なことは今は都会の 真ん中に住んでいて、四季折々の風や花の香りが漂ってくるような環境ではありません。それでせめて自然の匂いを部屋にと、観葉植物や花を置くことにし ています。

そうしないと息苦しくなってしまうからです。ホテルや病院でも、 あっという間に自分が心地良く眠れるようにアレンジしていくので、明先生も驚きです。だって≪お気に入りゆりかごづくり≫ってとても楽しいんですよ。

ホテルでは
・ベッドを移動して位置を変える
・机の上の案内パンフレットなどは、全て机の中に入れてしまう
.壁の額には自分の大判のハンカチぺスカーフをかける
・空間使いが合わない時は、椅子やテーブル、荷物を重ねて間切りにして簡易 ついたてを作り、それに自分の服やスカーフをかける。
・カーテンレールにハンガーにかけた自分の服をかける
(幸い私の服や持ち物は、ほとんどふんわりムードのもので色も淡く花柄なので、部屋のアレンジにはもってこいなのです)
.滞在が長くなる時はお花を買って飾る

入院の時は
・ふわふわの特性タオル(バスタオルも)を何枚も用意する・三つ折、四つ 折、にして高さを変えながら、肘、膝、足首の下に置く。そ うして眠ると、まるで体が空に浮いたように楽になります。
・首にも、着物襟のようにしてタオルを巻く
•手のひらに小さな赤ちゃん用のフワフワのぬいぐるみをふんわり持つ。そういうものに触れると、手のひらの筋肉が緩み、頭・心・体がよりリラッ クスでき、眠りやすくなります。

新幹線や車の中では—
・乗車したらすぐにクツを脱ぎ、ほかほかソックスに履き替える
・持っている荷物を肘下に置くと、横隔膜がリラックスして息が緩む
・大判スカーフや上着で膝や大腿部をあたためる。そこがあたためられると、足への血流が促進される。

≪お気に入りのゆりかごづくり≫の共通のポイントは、全身が羊水に包まれているようなイメージで、お気に入りにセッティングしていくことです。このお話しが少しでも、お役に立てば嬉しいですが…。このようにしていく私ですが、ひとつだけ笑い話しのようなエピソードがあります。

● 生命を再生し、元気にしてくれる大切な眠りの時間
十年ほど前に、明先生の希望でフランスのお城に泊ったことがありました。 部屋に続く長い廊下も壁も窓も、どこを見渡しても金銀がちりばめられ、まばゆいばかりの、まさに貴族の館。通された部屋も同じようにゴージャスな調度品が並べられ、よくぞこんなところで眠れるものだと感心するほどのきらびや かさ、どこも手の入れようがありません。キャンセルすることもできず、我慢 してその日は宿泊したものの、「もう頼まれても二度と行きたくないね」とニ 人で苦笑いしたものです。

小鳥や動物たちが自分の巣づくりに励むように、やっぱり自分に適した心地よい巣づくり、ゆりかごづくりは、自分の手で、自分の感性でやるのが一番だと、その時つくづく思いました。赤ちゃんの為には≪心地よいゆりかご≫は探しても、大人になって≪自分の為のゆりかごづくり≫を忘れている人は多いかもしれません。

生命を再生し、元気にしてくれる大切な眠りの時間。どうぞ、あなた自身の 生命を、あたたかくやさしく包む≪特性ゆりかご≫に乗せて、今夜も素直な夢の世界へ運んであげて下さいね。




お母さんって いい匂い

赤ちゃんは、子宮という安全で安心な世界で10ヶ月を過ごして成長していきます。そして分娩が始まり、狭い産道を通過して外界へ出てきた瞬間「オギャア」という産声をあげて、肺呼吸を始めます。


理想的な自然体分娩で誕生しますと、鼻の中の羊水も排出してしまいますので、子宮の羊水の中では働くことのなかった嗅覚が、産声とともに働き始めるのです。


赤ちゃんは豊かな五感を使いながら、新しい環境の中で懸命に生きていきますが、視覚がまだ十分に機能していない新生児にとって、特に嗅覚は自分を守るための大切な感覚となります。


生まれたばかりの赤ちゃんを、ヘソの緒をつけたままお母さんのおなかの上に乗せますと、しばらくモゾモゾしていますが、やがてお母さんの乳首にたどりつき、自ら吸い付きます。その間、ほぼ20~30分です。


赤ちゃんは未だ目は見えていませんから、専らニオイだけを頼りに進みます。お母さんの乳輪からは、特有のフェロモンが出て、赤ちゃんの案内役を務めます。


このような赤ちゃんの大切な嗅覚を守るために、赤ちゃんの部屋は、なるべく強い刺激のニオイを少なくしなければなりません。お化粧や香水はもちろん、お祝いでお花をプレゼントする時も、できるだけ優しいニオイのものを心がけましょう。


産着やオシメの洗濯も香料の少ない洗剤に工夫してみて下さい。お母さんのニオイにたっぷりと包まれていると、赤ちゃんはホッと安心をして、落ち着くことが出来るのです。ですから、お母さんのニオイを消してしまうアロマなどの刺激は、おすすめできません。


冷暖房で運ばれてくる風ではなく、ゆるやかで、さわやかな自然の風も、赤ちゃんの免疫力を高めていくことでしょう。


夜泣きが激しくて、いろいろあやしてみるものの、原因がよく分らないとおっしゃるお母さんの悩みを耳にします。一因にニオイのことがあるかもしれません。


赤ちゃんを、一人でベッドで寝かせて居ませんか?できるだけお母さんのニオイを感じる距離においてあげて下さい。お母さんのそばで、優しいニオイに包まれて、赤ちゃんは安らかに眠ることができます。おんぶや抱っこも同じです。お母さんの肌に密着できる絶好のチャンスなのですから。


鋭い嗅覚は、生命を守るための本能で、赤ちゃんの専売特許ではありません。子供にも大人にも大切な能力です。


それなのに最近、食物が腐っているかどうか、判断できない子供が圧倒的に増えています。「このお豆腐、腐ってない?」と聞かれて「自分で匂ったらわかるでしょっ」と答えると、「分からん、でも賞味期限過ぎてるよ」ですって!!


野生の動物にとって嗅覚を失うことは、自分の身が危険にさらされることに直結しています。本来は、人間も体に毒となるニオイは不快と感じていたはずなのに・・。


妊娠中は、五感が繊細に敏感になっていきます。この10ヶ月は神様が下さった『動物としての生命の感覚を、もう一度取り戻すことができる祝福の期間』なのかも知れません。


もう一度赤ちゃんと同じような感覚レベルになって、自分を包む環境を新鮮に感じられるなんて、とても素敵だと思いませんか?妊娠期をこのような視点に立って過ごすことで、自分の身にとって安全か否かを嗅ぎ分けることのできる能力がグングン高まっていきます。


更にボディートークと「体ほぐし」や「自然体運動」でマメに体に向き合うと、五感が研ぎ澄まされ、第六感も鋭くなっていきますから、子育てにも産後ケアにも大いに役立つことでしょう。




心に響く声 -エンゼルボイス

●心を安らかにしてくれる音

♪卯の花の    匂う垣根にほととぎす        早もき鳴きて

                 しのび~ね も~らす 夏~は来ぬ~ ♪

花の香り、そして、どこからともなく聞こえてくる季節の訪れを知らせる鳥
の声…。そんな中にいると、私たちの心は安らかな気持ちに満たされていきま すね。耳にする人の声も様々ですが、今日はエンゼルボイスについてお話し
てみたいと思います。

●フィンランドの思い出

もう 15
年も前になりますが、20世紀最後の年の暮れをフィンランドで過ごしたいと明先生と出かけました。凍りつくような北欧の夜空を一
瞬にして七色の光に輝かせ、染め変えていくオーロラの見事さは言うまでもありませんでしたが、もうひとつ私を感動させたものがありました。それは犬ゾリの手綱を     引く一人の女性の《》でした。まるでおとぎの国から出てきたように物腰もやさしく、端正な顔立ちの 30 代ぐらいの女性でした。

私たちは零下 20 ℃の寒さに耐えられるよう、分厚い防寒着を着せられ、仰向けに横たわり、頭だけを起こした姿剪でソリに乗せられました。吠えたてる犬たちの手綱を持ち、彼女がスツとソリの先頭に立つと、一声「シッ!」と
いう声がして、手綱が引かれ、犬たちは一斉に勢いよく氷上に飛び出しました。ほんのりと月明かりのような(冬の北極圏では昼間でも太陽の光がほとんど射さず、夜のように薄暗いのです)太陽の光に照らされた広い広い凍った湖の上
をソリは果てしなく滑っていきます。空からはまるでダイヤモンドのようにきらめく雪が舞い降りてきます。

シーンとした静寂の中に聞こえるのはザッザッザッと駆けていく 20 匹の犬たちの足音と、時折方向転換のために合図される「シッ!シッ!」という声だけ。「とても小さな声なのに、なんて凛として穏やかな声なんだろう!」目の前を走るこの犬たちは、きっと彼女にとても可愛がられているに違いない。彼
女と犬たちの心が強い絆で結ばれているからこそ、こんな小さな声でもすぐに犬たちの心に響くのだろうなと思えるほど、あたたかく慈しみに満ちた声でした。そして私には、それはダイヤモンドダスト(雪)に乗って天から降りてき    た天使の声のように感じられました。

その声を一緒に聞いた明先生は、それから5 年後に生死をさまよう様な大病をされましたが、その病気を機に、ボディートークの繊細な生命を大切にする感性としてのエンゼル・ハンズとエンゼルボイスが生まれました。そしてそ
の後、ボディートークの内容は生命にとって更に深いものになっていったのです。

今は看護師・助産師・保育士さんが現場でそれを皆で取り入れ、成果を実らせている嬉しい報告もあります。どうやって育てていくのかをまた次回お話ししたいと思います。




羊水感覚の環境づくりを-妊婦さんへのメッセージ―赤ちゃんを迎え入れるために

北極の氷が溶けてしまう? 森林が無くなる?  渡り鳥がウィルスを運んでくる?ー今や地球環境問題は、全人類や生物がのっぴきならない事態に陥っています。そして外的環境のみならず、私たちの《内なる自然》即ら、体や心の
内部にも自然破壊が進んでいます。

新しい生命の誕生を、身を持って創造する妊婦さんにとっても、例外ではあり
ません。実は出産こそ純粋に大自然の営みなのです。その意味で、自然に反することは避けなければなりません。そして妊娠期は自然を取り戻す絶好の チャンスでもあるのです。受精、受胎、妊娠、出産と、この時期は母子共に最
も自然の力が活性化される、奇跡とも言える至福の時です。

そこで提案です。この<内なる自然>を実現する、大ぃなる知恵と体験を、地球環境を考える素敵なチャンスにして欲しいのです。こんな風に言いますと、そんな大層なことを…、と思われるかも知れませんが、何も構える必要はあり  ません。お腹の中の赤ちゃんに、育ちゆく生命を感じながら、妊婦さんがどう  過ごせばいいのかに気付き、実行していくことが大切なのです。ボディートークの見地から、いくつかの工夫を御紹介しましょう。

●上手に転びましょう

「妊婦さんは転ばないように、気をつけて!」と、産婦人科では言われます。  流産の危険性があるからです。似たようなことは高齢者の転倒防止でも言われ
ます口 骨折したり、寝たきりにならないための予防策です 。しかし、この当たり前に思われる注意に、自然に反する原理が潜んでいるのです。

「転ばないように!」と注意されると、筋肉が硬くなります。そして心は緊張して、動きがギクシャクしてきます。結論を言えば、転倒防止を強調すれば
するほど、人は転びやすくなるのです。大事なことは、上手に転ぶ道をつける ことです。ボディートークの自然体法なら「とろけ寝」の運動です。軽く足を 開き気味に、楽に立って体を左右にユラュラと揺すります。その動きの中で、
膝、腰、背骨、首を緩めて、ゆっくりとしやがみ込んでいって、仰向けに寝転 んでしまいます。まるで美味しいアイスクリームが溶けていくイメージです。

体の固い人や、そういう動きに不安感のある人は、始めはお布団の上でやってください。「トロ、
トロ、 トロ~~」と言いながら。やわらかい声で寝転ぶと、体がリラックスして、息も楽に深くなります。そういう動きを身につけると、道を歩いていて転びそうになっても、自然に心も体もゆったりとしていて、慌てずに対応できるようになるのです。こんな「とろけ寝」なら赤ちゃんも安全ですね。

●食感を磨きましょう

赤ちゃんは何でもかんでも、口へ持ってきて舐めます。この行為は乳首をロ
にふくむ強い本能でもあるのですが、舌で物を確かめる、という思いもあるの です。そういえば動物たちのお母さんは、赤ちゃんをペロペロと舐め回します ね。あれは皮膚を整えて丈夫にする(動きもあり、内臓を揺り動かして流れをスムーズにさせる働きもしているのです。

人間のお母さんは赤ちゃんを舐めませんが、赤ちゃんの舌を共感するためにも、妊娠中は舌の感覚を研ぎ澄ます絶好のチャンスです。食物を口にした時、
味だけではなくて舌ざわりも意識して下さい。そして繊細な食感で料理の工夫 をして下さい。キュウリやトマトも切り方ひとつで美味しくもなり、不味くもなるのです。

食物だけではありません。食器にも舌ざわりが大切
です。赤ちゃんが初めて口にするスプーンやお皿など も、お母さんが舐めてみて、いい感じのものを選んで ください。ちなみに私は、ヨーグルトを食べる時には、陶器の小さなスプーンを使っています。舌ざわりがとても柔らかで、スベスベ
して気持ちがいいのです。このスプーンを見つけた時は本当に嬉しかった。実 は大きな声では言えないのですが、食器を選ぶ時には、お店の人に気付かれな いように、そっと唇に当ててみます。

妊婦さんが食感を磨くと、更にいいことがあります。食べすぎを防ぐことが
できるのです。御存知のように、お腹の中に赤ちゃんが宿りますと、母体はその分の栄養を要求されますから、ついつい食べ過ぎるのです。この時、食感を磨くトレーニングをするだけで、一口一口ていねいに食べますから、食事に時
間をかけることにもなり、唾液も十分に出て、少食でも満腹感が早くやってく るのです。そしてゆっくりの食事は、赤ちゃんを育てる時にも、赤ちゃんのペースにお付き合いできるようになるのです。

妊婦さんのための、心や体・生活の仕方の個人レッスンを受け付けています。




5月の風にカーネーションは揺れて

●自分をほめていますか?

この言葉は、私がボディートークの月例会やセミナーでよく言います。辛い時、悲しい時、ふんわりと繊細な手のぬくもりと暖かい息で心と体を包み、「よくやってるね」「よく頑張ってるね」とささやくように、自分に言ってあげるのです。

私がボディートークに出会って「そうなんだ!」と感心し 感動していった事の一つに 「こよなく自分にやさしくしましょう」がありました。 それまで人にやさしく」とは言われても、「自分にやさしく」など聞いたことがなかったのです。

●赤ちゃんのように泣ける

自己反省は得意で 達成目標を高く掲げ、 いくら努力しても「まだまだこのくらいではダメ!もっと!」と叱咤激励するのを良しとして生きてきた私でした。 ですからボディートークに出会って最初の頃は、体ほぐしをすると、それまでしっかり自分の心の奥に押し込めガマンしていたものが、次から次へと涙とともに出てきました。

過去の頑張っていた自分に「よく頑張ってきたね」と、自分をやさしくほめながら体ほぐしをすると、体がファ~ッとやわらかくなっていき、涙がいっぱい溢れてくるのでした。

ボディートークのプライベート・レッスンで安心でき、 体が緩むから泣けるのです。 自分の感清をそのまま素直に出せる場は、いくつになっても本当は誰にも必要なのですが、様々な人間関係の中で、そう出来ないことが多いのが現実です。

●素直な自分が戻ってくる

子どもも大人も、自分の押し込めた感情を思いっきり外に出せると、スッキリとしてきます。そして素直な自分が戻ってきます。ケンカしていても「ゴメンネ」と素直に謝れるようになったり、「どうせ私には出来ないのだから」といじけたりしていた気持ちが「もう一度やってみようかな?」というように、前向きな気持ちになれたりとか、また状況に応じて、自分の感情をコントロール出来るようになったり、他の人の為にも何かをしてあげたいというような気持の変化も起こってきます。

●お母さん 大丈夫よ!

先日、子育て・マタニティ講座でこんなことがありました。0オ、2オ、5オと三人の女の子を持つお母さんです。育児に疲れ切つていて、毎日子どもを叱ってばかり。そんな自分がイヤになり、「 もう私はダメな母親です」とウツ状態でセミナーヘ参加されました。

いつものように体ほぐしをさせていただきながら、「よく頑張って来られましたね~。大丈夫ですよ。今は疲れてきって体が固くなり、息が苦しくなっています。 でもね、体がほぐれていけば楽になりますよ。三人も子どもを産み、こんなに立派に育てて来られたのですから、大変でしたねぇ∼」とお話していたのですが、次の月には、お母さんの表情はずいぶんふっくらと穏やかになっていらっしゃいました。

そして「ありがとうございました。前回はずいぶん楽になりました。でも、暫くしてまた私が落ち込んでいましたら、5オの娘が傍に来て『大丈夫よ、お母さん!三人も子どもを産んで立派に育ててきたんだから…』と先生の口調そっくりに言いながら、私の頭を撫でてくれたんですよ。それから毎日ヨシヨシしてくれるようになったんです」と涙を浮かべながら報告して下さいました。お母さんはどんなに嬢しかったことでしょう。

親子一緒のグループレッスンですから、どの人にも体ほぐしを一人ずつ順に行います。2時間近くのあいだ、どの子も部屋を元気よく走り回りながら遊んでいます。遊ぴながらも、子ども達はお母さんのことが心配で、私の言っていることを聞いているのですね。

●「エンゼルハンズ」 ・ 「エンゼルポイス」 ・ 「エンゼルハー ト」

この講座では、子どもが ーオぐらいになっていれば私は「ネェ?こんな風にお母さんにできるかな?」とお母さんの頭をヨショヨシするように、そっと撫でてみせます。するとほとんどの子どもは「ウン、できるよ。よく頑張ったねェ~、大きくなったねェ~ 」といいながら、まるでお母さんがするように、何度も何度もお母さんの頭を撫で始めます。

その手はふんわり暖かく、やわらかく、優しく、声もソフトです。そうされる度にお母さんの表情が優しくなり、 ニコニコ顔で変わっていくのを、子ども達はちゃんと見ているのです。お母さんは そうされると、思わず「ありがとう!」と言って、その子を抱きしめたくなります。

子どもの手は小さいけれど、驚くほど大きな包容力を持っています。それは実際にやってもらうと良く分かります。ですから私はセミナーの終りに、「毎晩、おやすみなさいの前にお母さんが子どもに、また子どもがお母さんに『今日一 日、よく頑張ったね』と言いながら頭を撫でてあげてね』とお願いするようにしています。

微笑ましいこの光景が家庭で、毎日当たり前に身についていくといいなぁと思っているからです。それを実行したらどんなことが起こったと思いますか?

● エ ン ゼ ル ハートが育つ

Sちゃんは1オ4ヶ月、ようやく歩き始めた女の子です。ある時セミナーの途中で一人の お母さんが、生後3ヶ月ぐらいの赤ちゃんを部屋の隅にいて、ちょっとトイレヘ立たれました。赤ちゃんは声を上げ、泣き始めました。するとSちゃんはヨチヨチ歩きで赤ちゃんの所へ行き、赤ちゃんへ涙をふくようにとタオルを渡し、頭をナデナデしたのです。(Sちゃんは毎晩、お母さんをヨシヨシしていて上手です)

周囲の大人達はそれを見てビックリ。Sちゃんのお母さんは、兄弟でもない赤ちゃんにも思いやりの心を持てるようになった我が子の成長を見て、大喜びでした。幼い頃からエンゼルハンズ、親子で触れ合っていく子ども達には、人を思いやれるエンゼルハートも、いつの間にか自然に育っていくことを教えてくれた出来事でした。

もうじき五月。さわやかな風に赤いカ ーネーションが揺れています。一枝に寄り添つて咲く真っ赤な大きな花とちっちゃなつぼみ達。その花達の姿<ありがとうと感謝する心>や

<思いやる心>をさり気なく互いに伝え合える、暖かい親子の姿のように私には見えてきて、ほのぼのとした気持ちに滴たされていきます。




ストローでチュッチュッは、何だか美味しいね!!

● ストローでチュッチュッがお気に入り

K君は3オになったピッカビカの保育園の一 年生。 朝になると「行かない!」とむずがるものの、 お母さんと保育園に行ってしまえばホイツと仲間の中に入って一 日を過ごせる男の子です。

通園し始めて2週間ぐらいして高熱になり、インフルエンザかな?と心配しましたが、 次の日にはスーツと熱も下がり、お母さんは安心しました。けれど熱を出した数日前から、 お腹の調子が思わしくなく食欲も落ちていたので、朝食前とおやすみの前にあったかい牛乳を飲ませることにしました。

するとK君は、牛乳をまるでおっぱいを飲む時のような表情でストローでチュッチュッと吸い始めました。このストローチュッチュッがどうもお気に入りになった様子で、熱が下がった後もこのストロータイムは続いています。

「今までこんな事はなかったのですが、  何故なんでしょう?」と、お母さんから電話での相談を受けました。

●僕が開けたかったのに・・・

K君は生まれた時から、 ボディートーク・マタニティ子育て教室に通っていた、
とてもプライドの高い男の子でした。 ある時ペットボトルの蓋を開けようとしましたが、 なかなかうまく開けることができません。 傍らでそれを見ていたボディートークの指導者が、
気を利かせて「ハイ!どうぞjとその蓋を開けたとたん、 突然「ワー ツ!」と大声で泣き出しました。

「エッ!?どうしたの?」と大人達はぴっくり。 その頃のK君にとっては、ペットボトルの蓋開けは、まだ新しい課題。 それでもどうにか自分で工夫してやってみようと、一生懸命頑張っていたのです。大人にとっては、 早く蓋を開けてお茶を飲ませてあげようという心づかいでやった事なのですが、K君は自分でふたを開けて、自分で飲みたかったのです。 なのに蓋をとりあげられて、 自分の出番なくして蓋はすでに開いてしまったのですから、悔しくて泣き出してしまったのです。何でも大人と同じようにできるようになりたい。失敗したり、できないところは見られたくない。《自分の力で、自分一人でできた》という  喜びと誇りが、K君の次への向上心へと繋がっていったのです。

公園でスベリ台を見つけた時、すぐには近寄らず、遠くからお兄ちゃん達の滑るのをジ一 つと見ていて、誰もいなくなるとソーッと一人で確かめながら何回も滑る練習をする、慎重派タイプのK君です。

●あれもこれも新しいことばかり

そんなK君をゆっくりと穏やかに見守ってくれていたお母さんとの生活から一変して、新しい仲間との保育園の一
日。赤ちゃんもいれば、年上のお姉ちゃん、お兄ちゃんもいっぱい。食事の時も、哺乳瓶からミルクを飲む赤ちゃんもいれば、マグカップからグイグイお水を飲む年上の子達もいます。見ること、することが、次から次へと新しいことだらけで、K君の頭も心も体も大忙しで す。

●幼児がえり・赤ちゃんがえりは、大切な反応

新学期が始まる4月は、個人差はありますが子どもも大人も少なからず、K君と同じように環境の変化が大きな時期なのです。特に生命が繊細な幼い子どもの頃は、自分の体や心に大きな変化があったり、不調が起こると、内息になりがちになります。そしていろんな形で《幼児がえり、赤ちゃんがえり》になることがあります。外や内の大きな変化を受け止め、それに適応していこうとするエネルギーがより必要となり、《内なる転ネルギーを充実させていこうとする営み》が《幼児がえりや赤ちゃんがえり》になって表れているのです。    

電池で動くおもちゃを考えてみると、よく分かります。動かせば動かすほどエネルギーが減っていくので、充電が必要になってくるというシステムです。赤ちゃんが生きていくためのエネルギーは《おっばい》ですが、それは単に栄養の補給だけでなく、お母さんのふんわりとした皮膚とのふれあい、匂い、優しい眼差し、
あったかい息づかいなどを含めての、まさに心と体のオアシスでもあるのです。

K君がミズカラ選んだストローでチュッチュッという行為は、一気にコップから飲むのと違って、おっばいを吸っていた時の唇や舌の使い方に近いのです。K君の体は無意識の中にそれを知っていて、自分の心と体のオアシスヘ行って、新しい保育園生活に必要なエネルギーを補給しようとしていた訳です。また、朝起きたばかりの時や、
夜、 少し眠くなってきた時は副交感神経の働きが優位になり、 昼間の緊張が緩んでいるので、《赤ちゃんのような心と体》になりやすくなる、オアシスタイムでもあったのです。自分でオアシスを探し当てたK 君に、「いいぞK君!」と何だか誉めてあげたくなりました。

●一緒にストロータイムを楽しもう

「K君は、保育園や家の外ではストローでチュッチュッはしないでしょう? お家の中だけ、しかもお母さんと
一緒の時だけそうするのではありませんか?」と尋ねると、 「ハイ、 その通りです」との答え。「やっばり。K君らしいですね」と、
思わず微笑んでしまいました。 他の人の前では、いつもカッコイイ、立派な男の子でいたいK君なのです。

お母さんと二人で、 K君の成長ぶりを喜び合いながら、「できれば、  お母さんもK君と一緒にストローで飲んだらどうでしょう?恋人のように見つめ合い ながら、『ストローで飲むと何だか美味しいね』って言ってみるのもいいかも?」ちょっとシャイな表情でニッコリするK君の笑顔が浮かんできそうです。“さり気なく、子どもの心に楽しみながら寄り添っていく・・
きっとお母さんにとっても 素敵なひとときになれそうですね。