ボディートークコラム

なま卵とお話し

image_print

 

♪  ヒヨコがね  おにわで  ぴょこぴょこ かくれんぼ . 

    どんなにじょうずに かくれても 

        黄色い あんよが みえてるよ~ ♪ 

人間の赤ちゃんも一人で歩けるようになると、もう嬉しさいっぱいであちこち歩きまわり「ア ア ア ア」と、ママたちはいつもハラハラ、目が離せません。 

人間の赤ちゃんが、自分の足で歩き始めるには、生まれて一年ぐらいかかりますが、それに比べヒヨコさんは、突然まんまるの卵が割れると、すぐにピヨピヨピヨ、歩き出すのですから、びっくり大変身です。 

●卵が立たないよ~ 

今回はこの卵を使ってのボディートークのプログラム≪なま卵立て≫についてお話しましょう。これは特にボディートーク指導者を目指す人には必須の学習内容です。 今年テストを受ける人の中に卵が立たず、「う~ん」と悩んでいる人がいます。

日頃の彼女の学習意欲はとても高く、人一倍の努力家です。努力しているのに立たないのです。私は「これはきっと神様が下さった彼女へのプレゼントに違いない」と その様子をニコニコと見守っています。すぐに卵が立たないからこそ、深く学べる絶好のチャンスなのです。 

● そんな時、あなただったらどうする? 

もう30年も前のことですが、熊本で20名ぐらい一斉にボディートーク、リー ダー養成講座をしていた時のことです。「卵は必ず立ちますよ。さあ、やってみま しょう」と参加者に一人一個ずつ卵を手渡しました。

しばらくすると「あ、立った !」という喜びの声がして、最初の卵が立ちました。「本当に立っている!」会場に思わず歓声が起こります。それをきっかけに「あ、立った!」「立った!」と次 から次へと卵が立ち始めました。立たない人は少し焦りながらも、どうしたら立つのかな? と色々工夫しています。私はただ「必ず立ちますからね」とニッコリしているだけ。 

一時間ぐらいすると、ほとんど卵は立ち、二個目、三個目を立てる人も出てきま した。卵が立たなかった人の方が少なくなってきたその時、突然、一人の女性 が「こんなことして何になるのよ!!」とすごい剣幕でイカり、立たない卵を置いて サッサと帰ってしまいました。 

● どの卵も一つずつ異なっている。 また、女子短大のボディートークの授業ではこんなこともありました。 「卵は必ず立ちますからね。そう信じてやってみて下さいね」とだけ言ってすぐに プログラムスタート。しばらくすると「先生、どうも私の卵は立ちにくいみたいで す。交換してもらえますか?」とたずねる学生が数人出てきました。予備に持ってきていた卵ケースを差し出し、「良いですよ。どうぞあなたの好きな卵を選んでみ て」と、やはり私はニッコリしながらOKしました。(授業後に、もしこの卵があなたの赤ちゃんだったら、出来が悪いからって取り変えることはできませんよね・ ・・とコメントをしました) 

でもさすがに、ボディートークの50人の背中叩きを実行し、背中叩きのテストに 合格した学生達です。卵とのボディートークも上手にできたのでしょうか?50分 の授業内に生卵は全部見事に机の上で立ちました。そして、一つ一つ卵の傾き方は、 すこしずつ異なって立っていました。学生達は「美しいねぇ~」とか「良いねぇ~」 とか言いながら、自分の立てた卵と一緒に笑顔で記念撮影会を楽しんでいました。

授業後での感想には —「あ~、私には必要だったことはこれだったのだと気づきました。もう自分は何をしてもダメなんだと自分のことをあきらめていました。

でも、無心にひたすら自分を信じ続け、‟自分の内にある良さを見つけようと努力”し続けることが大切だったのだ、と卵が教えてくれました。卵が立った時、自然に涙が出てきました」とか、「最初は卵が立つなんて信じられませんでした。でも先生が『必ず立ちますよ、あきらめないで』と繰り返される声に励まされて最後まで頑張ることができました。立って本当に嬉しいです。ありがとうございました」と感謝の気持ちが生まれてきた学生もいました。 

人は誰でも決して一人では生きていくことはできません。赤ちゃんから成長していく過程の中で、沢山の人の思いに見守られ、支えられながら、 これまで生きていくことができたのです。

当たり前のことですが、 いつの間にかそんな事、忘れてしまっていることが多いのかも? そし て、自分の中に生きていこうとする強い生命の力があるからこそ、生きていられ るというのも真実です。≪生卵立て≫は≪生きているとは何か、自立とは何か?  支えるとは何か? ≫ など、新鮮な感覚で体に蘇らせてくれる素晴らしいボディー トークのプログラムなのです。

 私は幸い(?)卵を立てるまでに数週間かかりました。そして立った瞬間、「ワァ ~立った!立った!」と大声で叫び、手が痛くなるほど拍手し、部屋中をかけ廻りました。物言わぬ卵を見つめ、ひとすら話し続けた貴重な時間。≪自分や他の生命との関わり方を誰からか教えられるのでは なく、ミズカラ感じ取り、学んでいく姿勢≫ 明先生はこのプログラムを通して、 ボディートークの本質を教えようとされていたのです。

私が卵に教えられたこと はいくつもありますが、それは次回号に引き続きお話させていただくことにしましょう。今、子育てや自分の生き方に迷っていらっしゃる方、生卵立てはお勧めです。

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

PAGE TOP