ボディートークコラム

魔法のしかけ

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Kちゃんは外国で育ち、里帰りでおばあちゃんの家へ初 めて連れてこられました。しかも大好きなママはお仕事で、パパと二人道中です。知らない所へ、知らない人のお家へ泊まることになり不安いっぱいです。 パパの腕にしっかりしがみついたまま、片時も離れません。

ところが突然パパ が「ちょっとトイレへ」と、抱っこから降ろして行ってしまいました。さあ大変。Kちゃんは全身を震わせ、その場で大声で泣き始めました。おばあちゃんは、もうオロオロ・・・。

子育ての中でよくある光景です。私は 「パパはトイレだよ」といいながら、K ちゃんの手をひいてトイレの前まで行きました。「Kちゃん、パパどこ!って呼んでごらん。パパ!どこ!って」と言うと、 Kちゃんは泣きながら「パパ!パパ!」
「パパ!どこ?」と一生懸命叫び始めました。

私も一緒に叫びます。「パパ、ど こ?」すると「Kちゃん ここだよ」と、パパがトイレの中から答えてくれま した。パパの声が聞こえると、更にKちゃんは泣きながら、「パパ!パパ!」 と叫びます。パパがトイレから出てくると、両手を伸ばし、パパの腕に飛び 込んでいきました。

日頃、まだ「パパ!」という言葉があまり出なかったKち ゃんでしたが、それからは「パパ!」の言葉を頻繁に使うようになりました。

● 強い願いが生み出す動きと言葉

《強い願いが生み出す動きと言葉》のところで述べましたが、《自分の強い願い》が全力で《動くエネルギー》を生み出し、その動きが《願いの言葉》になっていく。この仕組みをしっておくと、赤ちゃんが言葉を覚えていていく。もしくは、赤ちゃんの手におっぱいを触れさせてあげる。すると必ず 赤ちゃんの方から、おっぱいへくっついていくのです。

些細なことのようです が、《自分の声を出し、自分の意志が相手に伝わり、その欲求が満たされた喜び》が赤ちゃんの《自立の心》を育てていくスタートでもあるのです。そして赤ちゃんが《自分の欲求》を伝えられたことをしっかり誉めてあげることも大 切です。

● 布オムツと紙オムツ

おしっこについても同様のことが言えます。オムツが濡れて気持ち悪くなっ て泣いて母親に知らせることも、赤ちゃんにとって大切なことなのですが、今は紙オムツになり、不快感がなるべくないよう工夫されていますので、赤ちゃんは不快感を合図するチャンスを取り上げられているのです。

赤ちゃんの心の成長からすれば布オムツの方がすぐれていることもお分かりだと思うのです。 そしてやっぱり「偉かったね。おしっこしたよって言えたね」「気持ち悪かったね~。気持ちいいしようね」「あーうれしい気持ちいい! 気持ちい い!」とまめにオムツを換える。その時の赤ちゃんの《感覚》《感情》をお母さんが繰り返し《言葉》にしてくことは、赤ちゃんの言葉の力がついていくこ とにつながるのです。

● お母さんが《魔法のしかけ人》になると

本当のあたたかい魔法のしかけ人は、赤ちゃんが気づかないように、そっと、ふんわりと赤 ちゃんの心の中に入り込み、赤ちゃんの心をそのままに言葉にしてくれるのです。そしていつの間にか魔法のしかけ人は、赤ちゃんの心から そっと上手に抜け出します。

その時には、もう赤ちゃんは少しずつ《自分の感覚や感情や意志》を《自分の言葉》で伝えられるように成長し始めるのです。お母さんが「あたたかい魔法 のしかけ人」になってくれた赤ちゃんが、どれだけ幸せかは、言わずともお分かりですよね。

Kちゃんの場合も、ただ「大丈夫、パパはおトイ レにいったのよ。すぐ帰ってくるよ」と抱っこしながらなだめるのも一つの方 法ですが・・・。この状況を、

1 自分の足で自ら動き、欲するものを探すこと(得ること)

2 相手が見えない時も、声を出して呼んでみることで、自分の存在を知らせることができること。

3  そこに《言葉》が加われば、より明確に自分の意志が伝えられ学習できるチャンスとして捉える方法

あなただったらどちらを選択され ますか?
あなたが言葉の通じない国へ一人で出かけたとしたら、英語で言えば「I’m hungry!」と「I love you!」を知っていれば大丈夫だと冗 談で話すことがありますが、赤ちゃんもお母さんのお腹の中から全く言葉の通 じない世界へ生まれるのです。

赤ちゃんの「おなかが空いた!」「おしっこ、うんこが出て気持ち悪いよ~!」「ねむたいよ!」という意思表示は生きていくための基本的欲求である、食欲、排拙欲、睡眠欲、それを《声を出して泣くこと》で相手に伝えようとしているのですね。

野生の動物の赤ちゃん達は、い も豊富にエサがあるわけではないので、親達がエサを運んでくると、我先に 争うように、鳥なら「ピヨ、ピヨ、ピヨ!」ち首を懸命に伸ばし、口を大き く開けてエサにありつこうとします。また猫であれば、「ミャーオ、ミャー オ」と他の子猫を押しのけてでも、おっぱいのところへ早く行こうと、スリ寄 っていきます。《生きていく》ためには、まず自分の全力を尽くして食べ物を ロにしようとするのです。

● 突然おっぱいが口の中に入れられてくる?

その視点に立つと、そろそろ授乳の時間だからと、赤ちゃんがまだおなかが空いたと合図もしないうちに先々とお母さんのおっぱいを赤ちゃんの口に持って行くのはどうかな?と考えさせられます。

お腹が空くと、赤ちゃん は泣くようになっているのです。泣き出してからお母さんが、「偉いね~ お っぱい欲しいって言えたね~」「おっぱい欲しいね」「さあ、おっぱいにしましょ」と声をかけながら、赤ちゃんの口から少し離れたところにおっぱいを持っていくと、赤ちゃんは口を近づけおっぱいをまさぐります。

この、自分でみずから食べ物を求める行為が赤ちゃんの自立心を養うことにつながるのです。

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