ボディートークコラム

出る声と出す声 まず出る声を出してみよう

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自由表現法

生命が弾む

劇の中では自分でない役ができるからうれしい、という人がいます。しかし本当は自分の中にない演技は出来ないのです。イジワルな魔法使い役であれ、可憐なお姫さま役であれ、頑固なイギリス紳士役であれ、更には猿や鹿の役であれ、全て自分の体や心の中に潜んでいるものを引き出して、演技として実現しているのです。

その意味で”オノズ カラ”有しているものを”ミズカラ”の表現にまで高める行為が演技である、と言えるでしょう。

頃から甘ったるい声をしている人は、甘える役はこなし易いでしょう。足をドンドン踏み鳴らして歩く人に、気弱く尻込みする役は不適です。そうなりがちだということは“オノズカラ”そうなる道がついているということです。

表現は、そうなりがちだという本質を真正面から認めて、その方向から進めていくと豊かになっていきます。 歌で言えば、か細くとぎれとぎれの息の人は内息の祈りの歌から入るのがいいでしょう。

大声で元気に満ちあふれている人はカンツォーネ、物静かで暖かい息の人は子守歌あたりから始めると声が出易くなるのです。音楽大学では何でもかでもイタリア古典歌曲、例えば「カーロ・ミオ・ベン」などから勉強を始めるのが通例ですが、 一人一人の声の成長にもっと着目すれば、学生たちも才能を伸ばしやすいだろうに、と 思うのです。

音楽の話のついでに楽器にも一言。バイオリンは子供の体には子供の大きさ、大人に は大人にと、およそ6段階ほどのサイズがあります。子供の成長に従って楽器の大きさを替えていくので無理はないのですが、ピアノとなると大変です。

今、みなさんが奏いているピアノは大人用の大きさです。しかもヨーロッパの男性の手に合わせてあるのです。だから日本人の平均的な女性の手にとっても大き過ぎるので す。まして子供の手にとっては、小学生の男の子が貴の花のマワシをつけているみたいなものです。

そんなに大きな鍵盤ですから、子供が子供の力で自然にピアノを奏くと可愛い音しか出ないのです。それを大人が奏くように音を出させようとするものですから、子供は力をいっぱい入れることを強要されます。指が変形してしまっているピアニストを私は何人も知っていますし、またそういう人は音楽を苦しんで勉強してきた人です。

では子供のピアノ教育はどうすればいいか。子供サイズのピアノがそのうちできるでしょうが、それまでは子供の素直な音で満足することです。可愛いベートーベンでいい のです。速く奏けなくていいのです。

決して大人の真似事をさせないことです。子供が自分の体に矛盾なく演奏を楽しむようになると、音楽の心はグングンふくらんでいくで しょう。


声も音もまず「出る」というのが「オノズカラ」の道です。「出る」声や音をまずよしとして、それにもっとも近いイメージの表現を設定して練習を始めましょう。劇もいわゆるハマり役からこなしていくのがいいでしょう。もともと「出る」声を洗練させて「出す」というのが「オノズカラ・ミズカラ」の道です。

自由表現法その1
「瞬間彫刻」 – 全身表現に気付く

ボディートークでは、自分のうちに潜んでいるものが思わず表現となって外へ出てしまうという方法を大切にしています。 誰でも人の目を意識しているといつまで経っても自分を出せません。それが一瞬だと考える間がないのでポロッと出てしまうのです。

彫刻家はモデルにポーズをとらせて像を作っていきますが、そのポーズを生み出すことが大変にセンスの要ることです。

よく駅前に「希望」とか「友愛」とかの題をつけた彫刻を見かけますが、 ポーズがあまりにわざとらしく、安易なものが多い。そこへくると写真家は表情や動きの生き生きとした瞬間をとらえています。

ボディートークの「瞬間彫刻」は一瞬、ポーズをとる方法です。

1 メンバーが歩いたり、走ったり、寝ころがっている中で、リーダーが「あ、  押しピンを踏んだ」 とか「雨が降ってきた」とか、「忘れ物をした」「犬がやってくる」「懐かしい友達が手をふっ ている」などの題を出します。

2 その指示を受けてメンバーは即座に自分のイメージのままに演じます。

3 演技が始まったとたんにリーダーは笛を吹いてストップをかけます。

4 メンバーはその瞬間、そのまま姿勢や表情でポーズをつくります。 リーダーは生き生きとした彫刻を見つけ、他のメンバーを呼んで鑑賞します。

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